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高森明勅
2019.11.18 06:00皇室

大饗と饗宴

11月16・18日、大嘗祭への参列者を招く「大饗の儀」。
これとは別に、即位礼の後に「饗宴の儀」が行われた事は、記憶に新しい。
これは元々、大正・昭和の先例では大饗の儀だけだった。
何故か。

古来、別々に行われて来た即位礼と大嘗祭が、初めて連続して行われ
(その間隔はどちらも僅か3日間)、「大礼(大典)」という新しい概念で
一括されていた為だ。

大饗は「大礼」後の饗宴という位置付けだった(旧登極令15条)。
即位礼・大嘗祭が連続して行われる事に対する疑念もあった(柳田国男など)。
しかし、首都を遠く離れた京都で行う(旧皇室典範11条)以上、間隔を空けて
別々に行うのは負担が大きくなり過ぎる。
そこで現実的な制約から、意義も性格も異なる両儀式が、やむなく一括して
行われる結果になった。
しかし、平成では本来の伝統に立ち返り、首都の東京で即位礼も大嘗祭も
行われる事になった。
そうすると、明治以前のように2つの儀式を切り離す事が可能になった。
両者が「大礼」として一括されるのではなく、それぞれ別々に行われる
のであれば、即位礼の後にも、(大饗とは別に)それに付属する饗宴行事が
必要になる。

こうして、平成から新しく「饗宴の儀」が行われるようになった。
今回も当然、そのやり方が踏襲された。
特に今回は、前回よりも一層、2つの儀式が行われる間隔を長く取っている
(平成は即位礼=11月12日で大嘗祭が=同月22・23日、今回は前者=10月22日、
後者=11月14・15日)。

以上のような経緯を考えると、「大礼」という概念は、
既に過去のものになったか、又は新たな定義が必要になっている。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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